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最高裁判所第二小法廷 昭和34年(オ)206号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人木村一八郎の上告理由第一点について。

上告人組合代表者児玉寅一は、本件売掛金の支払いのため、記名その他の手形記載事項の補充を訴外川本漁網船具合資会社に委託する意思で、本件各手形の振出人欄に上告人組合の印だけを押捺し、その他の記載事項を白地としたままこれを右訴外会社に交付した旨の原審の認定は、原判決(その引用する第一審判決)挙示の証拠により、肯認することができる。そして、原審が、このような事実に基づいて、上告人組合代表者は本件各白地手形を振り出したとしたのは、相当である。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断ないし事実の認定を非難し、独自の見解に立脚して原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。

同第二点について。

原判決は、その挙示の証拠により、被上告人会社が、前記訴外会社から本件各手形上の権利を譲り受け、取立委任のため、一たん本件各手形を裏書により訴外株式会社大分銀行に譲り渡したが、結局その返還を受け、現にその所持人であることを確定している。このような場合には、被上告人会社は、裏書の連続の成否にかかわらず、手形上の権利を行使しうるものと解すべきである(昭和二九年(オ)第八六号同三一年二月七日当裁判所第三小法廷判決、集一〇巻二号二七頁参照)。したがつて、所論は、原判決に影響を及ぼさない事項についてこれを攻撃するにすぎないから、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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